サクラの花が

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 鼻から息をいっぱいに吸い込んで、口からは~っと吐き出した。 「いい空気だ!」  タクヤは満面の笑みでアンドレイの顔を見、「いただきます」と、アルコール飲料を一口飲んだ。 「ああ~、最高!」  ここは銀河系の辺境に位置する、とある恒星系の第四惑星。タクヤたちは〈移住惑星調査隊〉のメンバーだった。  西暦2500年代に入り、ワームホール航法が開発されたのを機に、人類の宇宙探査は飛躍的に活発化した。銀河系内の様々な恒星系が調査され、知的生命体こそ見つかっていないが、植物や下等動物といったものは無数に発見されていた。  地球環境は2000年代以降悪化する一方で、2300年代には人工的に管理された環境下でしか、動植物は生存できなくなっていた。必然的に、人類が移住可能な惑星の探査が重要視されてきたのだった。  〈第1453移住惑星調査隊〉の母船は、この惑星の衛星軌道上にあり、30ほどの着陸船が母船を離れ、惑星の各地点を調査していた。  その一つ、タクヤたちが所属する第18班は、キャプテン・トムをリーダーとする7人編成の現地調査班だった。 「許可なしでヘルメットを外すのは規定違反ですよ」  真面目な顔でアンドレイが言った。
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