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「本当にきれいな花ね」と、ブロンドヘアのキャサリンが花を見上げた。
「昔ニッポンにたくさんあった、サクラという植物にそっくりなのです」と、アンドレイ。
シートに座る6人の男女が、しばらくの間、ただ黙って咲き誇る花を見上げていた。
周囲は草原で、遠くに小さな緑の山がいくつか見えたが、それほど大きな木は生えていないようだった。
ただこのサクラのような木が1本だけ、7~8メートルほどの高さで、満開の花を咲かせて、圧倒的に目立っていた。
「俺、ここに移住してえな。このすぐ近くに家を建てて住むんだ」とタクヤ。
「まだ何年も調査してからです」とアンドレイ。
「おいタクヤ、眠そうな顔じゃねえか。酔っぱらったか?」
ロジャーが、からかうような口調で言った。ロジャーとタクヤは、この班の中で、最も酒好きな二人だった。
「ああ。なんだか今日は、ちょっと効いたな。少し眠くなってきた」
タクヤ以外の皆も、眠そうだった。
「少し横になりましょうか」と、キャサリンが言いながら横になる。
タクヤもごろりと横になり、全員が寝転がるが、アンドレイだけが、姿勢よく座っていた。
アンドレイは、固まったような微笑みを浮かべ、タクヤのほうをじっと見ている。アンドレイの向こう側には着陸船が見えていた。
その着陸船から誰かが歩いて来るのが見えた。
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