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周りには、第18班の仲間が集まっていた。
「よかった、意識が戻って」
白衣を着たブロンドのキャサリンが、二人のコードを外しながら言った。
「キャプテン・トムに報告してくる」
マリーがショートの黒髪をはずませるように、医務室を出ていった。
「ここは……」
絞り出すような声で、タクヤが尋ねる。
「母船に向っているところさ。もうすぐ帰還だ。今キャプテン・トムがこの調査船を操縦してるよ」
小太りヤンがほっとため息をつきながら言った。
「俺、幻覚を見ていたのか?」
「あの大きな木が、人間の脳波をコントロールしていたらしいぜ。な、アンドレイ」と、筋肉ロジャー。
「いったい、どこから幻覚なんだ?」
タクヤは混乱していた。
「きみがヘルメットを外して、アルコールを一口飲んだところまでが現実。あのあとすぐに意識を失って、私がタクヤを背負って着陸船に戻ったのです。だから飲んだところを境に、以降が幻覚」
「飲んだところ……以降が幻覚? ……まったくわからなかった。みんな下船もしてないのか?」
「ああ。俺たちは船にいたさ。なんだ、俺たちも幻覚に出演してるのか?」と、ロジャー。
アンドレイはベッドから体を起こし、頭のコネクターをさわりながら説明を始めた。
「あの木、サクラと呼びましょうか。サクラの目的が何かはわからないけど、着陸船のほうでも、ヒューマノイドであるキャプテン・トム以外の皆の意識が、朦朧とし始めていました。サクラは、遠隔で人間の脳を操ったり、意識を失わせたりできるようなのです。私の内部のセンサーが、サクラから発せられる微弱な電波を捉えていました」
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