サクラの花が

7/7
前へ
/7ページ
次へ
 アンドレイの説明にヤンが続いた。 「各地の着陸船でも同様の現象が起きていて、全班に引き上げ命令が出た。幻覚を見せるのは様々な植物で、共通するのは〈花〉だそうだよ」 「みーんなお花にやられちゃったのね」  キャサリンが医務室の機器を片付けながら言った。 「普通に推測すれば、サクラの目的は〈捕食〉でしょうね」  アンドレイが言うと、ヤンが怯えながら「こわ!」とかん高い声で言った。ロジャーとキャサリンは笑っていた。 「それにしても、タクヤ。無許可のヘルメット外しに、アルコールの船外持ち出し……当面は謹慎じゃねえのか?」  ロジャーはニヤニヤしながら言った。 「え? サクラの電波、船内まで届いてたんだろ? ぜんぶサクラのせいだよ。俺の意志じゃねえよ、まじでまじで」  アンドレイが、疑いの目つきでタクヤを見ている。 「どうだ、タクヤ。帰還祝いに一杯やるか?」  飲むジェスチャーをするロジャー。 「お、いいね……」  タクヤはそう言いかけて、乗り出した身を元に戻した。 「いや、よそう。また飲んだところから幻覚になるといけねえ」 〈了〉
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加