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アンドレイの説明にヤンが続いた。
「各地の着陸船でも同様の現象が起きていて、全班に引き上げ命令が出た。幻覚を見せるのは様々な植物で、共通するのは〈花〉だそうだよ」
「みーんなお花にやられちゃったのね」
キャサリンが医務室の機器を片付けながら言った。
「普通に推測すれば、サクラの目的は〈捕食〉でしょうね」
アンドレイが言うと、ヤンが怯えながら「こわ!」とかん高い声で言った。ロジャーとキャサリンは笑っていた。
「それにしても、タクヤ。無許可のヘルメット外しに、アルコールの船外持ち出し……当面は謹慎じゃねえのか?」
ロジャーはニヤニヤしながら言った。
「え? サクラの電波、船内まで届いてたんだろ? ぜんぶサクラのせいだよ。俺の意志じゃねえよ、まじでまじで」
アンドレイが、疑いの目つきでタクヤを見ている。
「どうだ、タクヤ。帰還祝いに一杯やるか?」
飲むジェスチャーをするロジャー。
「お、いいね……」
タクヤはそう言いかけて、乗り出した身を元に戻した。
「いや、よそう。また飲んだところから幻覚になるといけねえ」
〈了〉
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