花見

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 クラスのみんなでヨシノを見に行こうという話になった。花になったクラスメイトの晴れ姿を見に行こう、花見をしようと。提案したのは委員長の井上くんで、みんなは口々にそれは良いそれが良いと賛成し、担任の橋本先生はそんな姿を見るや、これぞ友情のあるべき姿だとでも言わんばかりに涙ぐんだのち、「これが友情のあるべき姿ね」と言った。  ヨシノは学校から少し離れた場所にいた。平均的男子より少し低い背はそのままに、首の根本から先は太い幹になっており、そこから別れた枝にピンクの花びらが付いていた。 「吉野くん、本当に綺麗」  誰かが言った。僕もそう思った。ヨシノは綺麗だ。 「ダメよみんな、ヨシノくんのことを哀れんじゃ。彼は自ら望んでこの姿を希望したの。単なる自殺じゃない。彼は前向きな選択をしたの」  違う。ヨシノは自殺だ。生きづらさ故に命を絶ったのだ。前向きな選択、バカバカしい。 「今更だけど、もっとあいつと話しておけば良かった」  赤城くんが言う。散々ヨシノを無視していた赤城くんが。 「俺はけっこう話したぜ。あいつ面白いんだ」  キモいんだよ。毎日のようにヨシノを殴っていた工藤くんが涙ぐんだ。 「なんか、ヨシノくんがいると場がパッと明るくなったよね」  虐められるヨシノを笑っていた森山さんがハンカチで目元をぬぐった。 「美しいわ」  全てを見て見ぬふりをして先生が言った。そう、美しいのだ。死んだ人間との思い出は美しい。不都合な真実を隠してしまうくらいに。 「さ、あなたも」  先生が視線をよこす。ヨシノ。僕は手を伸ばす。禁断の愛を伝えあった同級生を。そのせいで疎まれ、命をたった最愛の友人を。あぁ、ヨシノ。君は美しい。
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