エイプリルフール

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「え?」 「いくらエイプリルフールだからといって、おまえの彼女のその嘘は、悪質だぜ」 「まあ、かなりショックではあった」山田はうなだれた。 「まったく」高橋は鼻から息を出す。「そんな女と、いまだに付き合っているのが、理解不能だよ。そんな女の、どこがいいんだよ?」 「その……ツンデレというか、ぶっきらぼうで、気の強いところとか、それといつも命令口調なところとかーー」 「デレ(ヽヽ)がねえじゃねえか!」 「でも彼女……」山田がもじもじして微笑む。高橋は気持ち悪く感じた。「ーー部屋にいっしょにいる時、急に抱きついてきて、いきなりチューしてくるんだよ。それからは、完全、彼女の主導で……」  高橋は確信を得、「おまえ。彼女と男と女の役割、逆になってねえか?」と言いながら、山田の奴、真性のMだなと思った。  山田は高橋に、俺みたいにエイプリルフールに関する話はないのか? ときいてきたが、高橋は無い。と答え、飲みのお開きを告げた。山田はまだ飲み足りないようで不満そうだったが、明日から新年度、二日酔いではまずかろう。おとなしく帰宅することにして、席を立った。
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