エイプリルフール

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 ふたりは居酒屋の前で別れた。山田はコンビニに寄ってから帰ると言って、去っていった。   高橋は山田の背を見送ると、急に早歩きになった。顔は真っ青、体をがたがたと震わせ、ビルとビルの隙間を見つけると、そこに駆け込み、吐いた。  何度も嘔吐を繰り返し、吐く物が胃液しかなくなると、座り込んだ。懐から煙草を取り出し、震える手で火を点けた。  高橋は一本吸い終えたところで、目の焦点と思考できる意識が戻ってきた。彼は、由香子の事を思い出していた。自分の彼女だった女の事を。  ーーフラッシュバック  闇のなかでタイヤレンチが弧を描く。  由香子の頭にめり込んで、頭蓋骨を砕く音がする。  由香子は、身をよろけさせて、頭を押さえながら、尻もちをついて座り込んだ。  それでも彼女は走って逃げた。  森のなかに向かって逃げてゆく。真っ暗闇の森のなかに。  妙に逃げ足が速かった。  追いつくのに、ひと苦労した。  捕まえて、最後に一撃をくわえると、そのまま倒れ、動かなくなった。  そう、自分が殺した彼女のことをーー
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