彼女がほしい

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 半日ほどかけて隣の街に着いた。祭りをやっているようで、陽気な音楽が響き渡り、街は活気に満ちていた。人も多く、これならすぐに理想の女の子に出会えるかもしれない、とカイもマイルズも期待に胸を躍らせる。 「よし、行くぞ!」 「ああ、可愛い彼女を作ろう」  街の中心に向かいながら、すれ違う年の近い女性を眺める。  声をかけなければ始まらないと分かっていても、カイとマイルズは女性とどう接すればいいか知らない。彼女がほしい、と気持ちはあるのに、どうすればいいか分からずに一歩を踏み出せない。 「カイ、どうする?」 「どうするって、俺だって分からない。とりあえず落ち着こうぜ」  緊張や焦りで喉がカラカラになり、屋台でドリンクを買った。ベンチに座って喉を潤す。 「なぁ、俺たちってめっちゃ見られてないか?」  マイルズがカイの耳に口を寄せる。  カイも薄々気付いていた。周りからの視線に。 「マイルズがキョロキョロしすぎで田舎者だってバレたんじゃないか?」 「カイだって同じだろ! ……服とかもダサいのか?」  カイとマイルズの服は村のおばあさんたちの手作りだ。村ではそれが当たり前だから、自分たちの服装に全く気を使ったことがない。お互いの格好をチェックして辺りを見渡す。周りはみんな煌びやかに見えた。祭りだから特別なのか、普段から着飾っているのか分からないが、自分たちがとてつもなく地味に見えた。  2人は肩をくっつけて声を顰めながら、お金はあまりないけど服を買うべきか相談する。 「こんにちは」  声をかけられ見上げると、下着かと思うほど露出の高い女性が声をかけてきた。 「えっと、なんでしょうか?」  おずおずとマイルズが口を開く。  カイもマイルズも女性の身体に興味はあるが、こんなにも大胆に出されると戸惑う。2人とも女性と関わってこなかったため、女性に夢を見がちだ。女性は全員、清楚で恥じらいで頬を染めるような可憐な子であると思っていた。それが下着同然の格好で街を歩き、自分から年頃の男に声を掛けるなんてカルチャーショックだ。 「2人ともカッコいいね! 一緒に踊ろうよ」  いたるところで陽気な音楽に合わせて各々が踊っている。カイもマイルズもダンスなどしたことはないが、周りを見るとどうやら決まりがあるわけではなく、みんな好きなように身体を動かしている。激しく頭を振る人から、小さく身体を揺らすだけの人まで様々だ。 「踊ってみようか」 「ああ、そうだな」  カイとマイルズが立ち上がると、年の近い女性たちが集まってきた。 「私とも踊って」 「2人ともイケメンすぎ」 「名前教えて」 「私と1番に踊ろうよ」  あっという間に取り囲まれて、甲高い声があちこちから上がった。  カイとマイルズは目を瞬かせ、女性たちの圧に怯む。  誰がカイとマイルズと踊るかの争いがヒートアップし、完全に置いてけぼりにされた2人は、そっとその場から離れた。
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