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花吹雪で春色にかすむ風の中、まだ6歳ほどと思われる少女が叫ぶ。
「あの! こんにちは!」
安東香織は戸惑いを隠しきれなかった。
というか、なんなら少し怖かった。
あたりは人気のない森。巨大な桜の老木がほろほろと花弁を舞い散らせるのが見えた。そこは小さな公園で、日当たりもよく、昼食には最適。道の駅で買ったネギみそおにぎりを、一口、食べた瞬間。
少女が突然現れた。
戸惑う彼女へ返事もせず、少女はニカッと顔全体で笑うとまた叫ぶ。
「こーんにちはー!」
香織はバイク乗りで、休みともなればあちこちにアウトドアがてらバイクで出かけている。今日もそんなありふれた、だけど楽しい休日になるはずだった。
桜があんまりにも美しいので立ち寄った小さな公園……人の気配もないような森の中で、どうしてこんな幼い様子の女の子が?
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