その声がいつか春に咲くとき

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 戸惑いながら、香織は返事をする。 「あ、こ、こんにちは」 「申し訳ない。ですが、ここまで人が来るのはめったになくて」 「ええと。何か用ですか」 「あの子の練習相手になっていただけませんか」 「はあ、あの。挨拶の練習、と聞いたんですけど」  頷いた老人が言う。 「ぜひとも、お願いいたします」  香織は「ここまで言うのだから」と、二人の言う挨拶の練習に付き合うことにした。少女と視線を合わせる。 「っ、こんにちは」 「はい、こんにちは」  緊張した面持ちだった彼女が、ふわっ、と微笑んだその時だ。
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