20人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
『また会おうね』
その約束を守りたくて、僕はずっとイチコちゃんを探していた。
神様は言った。
──彼女が自分からキミの名前を言うまでは、秘密にしておくんだ。もしその秘密が守れなければ、その時点でキミは、魂ごと消えてしまうからね。
あの時、僕は深く考えていなかったんだ。とにかくイチコちゃんに会いたい一心で。
イチコちゃんが気づいてくれなければ、僕はどうしただろうか?
秘密にできずに話してしまっただろうか? それともイチコちゃんの傍にいたくて我慢できただろうか?
この秘密は神様の試練だったのかな。
だって、こたろうだって伝えたいに決まっている。
こたろうの生があるから、イチコちゃんに会いたいって思うんだから。
イチコちゃんが気づいてくれたこと。それが奇跡だし、イチコちゃんもずっと僕を想っていてくれたんだって、信じたい。
「イチコちゃん、気づいてくれてありがとう」
「本当に、こたろうなの?」
「そうだよ。イチコちゃんに会いたいくて、会いたくて……いっぱい伝えたかったんだ。こたろうとして過ごした楽しい時間の感謝を。いっぱいのありがとうを」
そう話す僕に、イチコちゃんは優しく笑いかけてくれる。大人になったイチコちゃんだけど、その笑顔も昔のままだった。
「そっか……ありがとう。会いに来てくれて」
その言葉に、僕はまた涙が止まらなくなる。
そんな僕の頭をそっと撫でてくれる。
「こたろうだったからかな。君の髪、すごく撫でたいって思ったんだよね」
「そんなの、いくらでも撫でてよ。僕、イチコちゃんに撫でてもらうの大好き」
「ふふっ、ありがとう」
そう言いながらも、イチコちゃんは僕の髪から手を離した。
気のせいかな? だけど僕の直感が知らせる。
イチコちゃんがこのままさよならしようとしてるって。
そんな事させるもんか。
最初のコメントを投稿しよう!