もう一度、キミの元へ~虹の橋を越えて~

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「……また、夢か」  アラームが鳴るより早く目が覚めてしまった。  夢だけど、夢じゃない。  きっと神様が秘密を忘れないように見せてくれているんだ。  物心ついた頃からずっと見てきた夢と、忘れられない人。生まれ変わる前、ずっと一緒だった僕の飼い主、イチコちゃん。  彼女に会いたくて、ただ会いたくて。ずっとずっと探している。  犬の『こたろう』として僕はイチコちゃんとずっと一緒に過ごしていた。  優しくてかわいいイチコちゃん。  ずっとずっと一緒だよって、いつも言っていたのに、僕は病気になって死んでしまった。  最期にイチコちゃんが言ったんだ。『また会おうね』って。  だから僕はなんとしてもイチコちゃんのもとに戻りたかったんだ。  ……まさか人間に生まれ変わるとは思わなかったけど。  家周辺はもう隈なく探した。中学に入ってからは自転車や電車で少しずつ捜索場所を広げていった。それでも見つからない。だから高校は家からより遠い場所を選んだ。そうすれば行くときも帰る時にも探せるから。    もともと早起きは得意だ。とはいえカーテンを開けても外はまだ暗い午前五時。この時間に母さんを起こすのも申し訳ないから、コッソリと起きて足音は忍ばせる……けど、不器用で身体の大きな僕はどうしても階段を降りる時に、ギシッ、ギシッ、って音がしてしまうんだ。 「あら大樹(だいき)。おはよう~」  一階にある母さんの寝室から、欠伸をしながら母さんが起きてきた。  あぁ、今日も失敗してしまった。 「ごめん、起こして」 「いいのよー。こっちこそごめんね。何にもしてあげられなくて」  そんなこと言ってるけど、母さんはちゃんと前日夜にはおにぎりを作ってくれている。僕はそれをありがたくいただいて、「行ってくるね」と最低限の支度をして家を出る。
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