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駅周辺の捜索をしてから電車へと乗りこむ。まだ早い時間だから座席はガラガラだ。学校のある駅まで行くか、途中駅で降りてギリギリの時間まで探すか……そんな事を考えていたけど、電車が動き出したら途端に眠気が襲ってくる。早起きは得意だけど、電車はどうも眠くなって仕方がない。
次第と揺れに身を任せて瞼が段々と重くなってくる。
あぁ、ダメだ。前にもこうして眠って終点まで行ってしまったのに。
脳は起きろと頑張って命令を出すものの、身体の方は言う事を聞かない。完全に電車の揺れと一体化してしまっている。今は何駅だろうか? そろそろ起きたほうがいいはず……
──この匂いだっ!
不意に鼻腔をくすぐった匂いを感じた瞬間、全身が感電したように刺激が走った。
僕が求めていた匂い。甘くて優しい匂い。
間違えるもんか、イチコちゃんだ!
起きろ、起きろ僕の身体! 早くしないとイチコちゃんが行ってしまう。
「……イチコ、ちゃん?」
なんとか眠い目をこすりながら、匂いのした方向へと視線を向けると、大きなカバンを肩から掛けた女性が、ビックリしたような顔をしてこちらを見ていた。
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