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プロローグ
「お願いです!付き合ってください!!」
「無理」
瞬殺だ。最短記録だ。
「海門、もう少し考える時間があっても、よくない?」
「考えるだけ、時間の無駄だ。それに、ここは職場だ。鳳支配人と呼べ」
「就業時間は、終わってる…」
「場所と立場をわきまえろと言ってるんだ、馬鹿!」
今までで一番ひどい言われようだ。
人のことを容赦なく振ったんだぞ。それで、その態度はあんまりなんじゃない?
「もうちょっと情け深い言葉掛けがあっても、バチは当たらないと思う…」
私が不満を漏らすと、
「変な期待を抱かせないためだ。その方が、お前の為だからな。いい加減、自分の歳を考えろ」
と、さらに傷口に塩を塗る。
言われなくても、わかってらい!
あと3ヶ月で29だよ。
全く誰のせいで、この歳まで一人なんだか、お前こそ考えろ!
「とにかく、何度告られても、結果は同じなんだから、いい加減やめてほしい」
そうなのだ。
これで、何度目だろう。
最初の告白が、中学生の時だから、そろそろ15年になる。確か、7回…いや、もっとかな?5回目を過ぎた辺りから、数えるのを辞めた。
悲しいことに、私、一ノ瀬翠は、この目の前にいるイケメンに、何度も告白しては、振られ続けている。
今回も、1年間付き合っていた彼女と別れた、と聞いて『今度こそ!』と思って告白したのだ。彼女がいる相手を振り向かせようとしている訳ではない。ちゃんと仁義は通している。…ちと早まった感は否めないが。
でも、モタモタしてたら、すぐに次の女が寄ってくる。今しかなかったのだ。
何で、こんなにもクソみそに言われても、諦めないのか…。
好きだからだ。鳳海門…コイツのことを。
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