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「あのさ、これ、秘密なんだけど、この学校の一年生のクラスで、殺人があったんだって」
「え……、それ、本当?」
「あぁ、まじまじ。しかも犯人、殺された生徒のクラスメイトだとか」
学校までの道すがら、そんな噂話をしている同級生の後ろから、僕はわざと鞄をぶつけて横を通り抜ける。
「いって……!」
「なにあの人……」
感じ悪、と囁かれているのを聞き流しつつ、何も知らない部外者は黙っていろ、と心の中で毒づく。あいつが――、タケダがどれだけの痛みを抱えていたか、何も知らないくせに。
「あー……、イライラする」
持て余す苛立ちとともに見上げた空は、奇しくも清々しいほどの秋晴れだった。
「まったく……、天気が良くて嫌になるね」
空き缶でも落ちていたら、思い切り蹴飛ばしたい気分なのに。
だって学校に行っても、もうあいつはいない。
――話は三日前に遡る。
* * *
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