何度、季節が巡っても

2/26
前へ
/26ページ
次へ
「あのさ、これ、秘密なんだけど、この学校の一年生のクラスで、殺人があったんだって」 「え……、それ、本当?」 「あぁ、まじまじ。しかも犯人、殺された生徒のクラスメイトだとか」  学校までの道すがら、そんな噂話をしている同級生の後ろから、僕はわざと鞄をぶつけて横を通り抜ける。 「いって……!」 「なにあの人……」  感じ悪、と囁かれているのを聞き流しつつ、何も知らない部外者は黙っていろ、と心の中で毒づく。あいつが――、タケダがどれだけの痛みを抱えていたか、何も知らないくせに。 「あー……、イライラする」  持て余す苛立ちとともに見上げた空は、奇しくも清々しいほどの秋晴れだった。 「まったく……、天気が良くて嫌になるね」  空き缶でも落ちていたら、思い切り蹴飛ばしたい気分なのに。  だって学校に行っても、もうあいつはいない。  ――話は三日前に遡る。           *     *      *
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加