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「……どうしたらよかったんだろう。俺は……、どうしたら――」
タケダがしゃがみこんで声を震わせてそう言うから、僕も一緒になってしゃがみ込み、タケダの肩を、そっと抱き寄せた。
泣いているタケダの声よりも、ためらいがちに触れた僕の手の方が震えていたかもしれない。
「――こうして泣けば良かったと思うよ。僕の前でも、……お母さんの前でも」
その言葉を受けて、タケダは堰を切ったように泣き始めた。
ようやく収まりかけていたのに、こらえきれなくなったとでも言わんばかりに目元を手で覆い、うずくまった。
「僕ら、まだ子供なんだから、……我慢なんて、きっとしなくて良かったんだよ」
タケダの瞳から流れる雫が、タケダの心を浄化してくれたら良いと思いながら、横顔に言の葉を届ける。
「――よく耐えたな。よく頑張ったよ、タケダは。僕の知らないところでもうずっと、頑張り続けていたんだな」
ポケットにタオルハンカチが入っていたことを思い出し、差し出して、なだめるようにタケダの背中を優しくなでる。
「……でも、もういいよ。……もう、いいんだ。頑張らなくて、いいんだよ」
あれ……。
どう、して。
気がつくと僕まで泣いていた。
普段、びくともしないタケダが小さくなって泣いているのを見ていたら、どうにも胸が詰まって。
自分が泣くところじゃないだろう、と涙を拭い、再びタケダの背をさする。
しばらくそうしていると、タケダの身体の震えが、少しずつ収まっていった。
「――なるほど、悪くないな、友達って」
震えがほとんど収まったとき、タケダは何か呟いたけれど、声が小さくて僕には聞き取れなかった。
それとなく聞き返してみたが、曖昧に微笑まれるだけで、「……田中、ありがとう」と返された。
今度は僕が曖昧に微笑む番だった。
「タケダも。話してくれてありがとう」
素直に気持ちを伝え合うのは初めてで、それはやっぱり恥ずかしくて、でもいま、ちゃんと伝えておきたくて。
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