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 あれから幾年も過ぎた。妻の死をひなたも徐々に受け入れられるようになったが、我が家には新しい習慣が一つできた。  ひなたの入学や卒業、就職、俺の昇進など。なにか大切な報告がある時は、夜の高台に二人で来ることだ。もちろん仏壇の前でも報告するが、星空の下の方が妻に直接語りかけられる気がするからだ。  そして、今日も。  大事な話があるとひなたに連れられて来たが、今日は聞かずにそのまま帰ってしまいたい。流石に大人げないのでそんなことは出来ないが。  黙ってコーヒーを啜っていると、意を決したようにひなたが口を開いた。 「パパに会ってほしい人がいるの。私、結婚する」  やっぱりか。思わず眉根を寄せた俺とは反対に、星は嬉しそうに瞬いていた。
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