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彼は同種の別個体とつがいになるのではなく、他の生物に遺伝子を混ぜて繁殖するらしい生き物らしい。なかなか順調に増えていると言う。
「どんな生物に?」
「桜だよ。ソメイヨシノ」
この国にソメイヨシノのない町はない。なるほど、地球では人類に気に入られれば労せずして増えることができる。
「目のつけどころがいいね」と褒めてみる。
「まあね。単に植物に寄生しただけじゃなく、この国の文化に寄生した、というところかな」
宇宙人は得意げに見えた。
「どの辺の桜?」
繁殖してる地域とかあるんだろうか。
「全部だよ」
「全部?」
「ソメイヨシノは全てクローンみたいなものだから。その最初の一本が僕」
「あの木も?」
いまお茶をしているこの中庭の中央にも立派な桜の木が立っている。まだ少ないが、蕾がつき始めていた。
彼はなんでもないことのように頷く。
「まじかー」
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