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「秋良サン……ダイジョブ?」
「じゃない! ……ごめん、八つ当たり」
「ハハ。……家、入りマショ」
なだめるように肩を叩かれ、私はそのままライの部屋へ連れ立って行く。
我慢しきれず、玄関の上がり口で一部始終をライに話した。
「……なんか、悔しくて。偏見とか差別とか……、頭では解ってたつもりだけど、実際、ああいうの聞いちゃうと……うまく、言葉にならなくて。
理不尽なこという人間に正論返しても、思考が違うから相手にするだけムダだって……自分のことなら、わりとやり過ごせるのに……!」
久しぶりの悔やし泣きで、目じり浮かんだ涙を乱暴にぬぐう私を、ライがやんわりと抱きしめる。
「秋良さん、確かにそういうトコありますよね。一見、冷めて流していても、好きなものとか大事なことには熱くなるというか」
静かな口調で耳に落ちてくる、ライの声。……こんな時に緒方ヴォイスになるとか。ズルい。
「……そうだよ。ライが好きだから、必要以上に腹が立ったんだよ」
外国人差別じゃん! っていう憤りは、表面的なものだ。
これが、ライ以外の外国人に対してのものだったのなら、泣くほど悔しいなんてこと、なかった。
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