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異種接近遭遇 Part.2『疑問』
「秋良サン、明日休み?」
「うん。休み。……ちょっと戻していい?」
私はいま、倉石もとい、クライシチャクリ……長いな、愛称ライの部屋にいた。
名前長いね、という話題の時に訊いた話によると、その由来は「獅子より勇敢な王様」というものらしい。
で、仕事先では獅子=ライオンの略でライと呼ばれてるとのこと。
「ハァ……相変わらず良い声だな、緒方さん」
「萌ぇル?」
「萌える〜」
バカみたいな会話を交わしながら、アニメのDVDを二人で観る───ようになって数週間経つ。
が、誤解のないようにいえば、私とライの間には、これっぽっちも艶はない。
アハハと笑い顔を見合わせても、それ以上でもそれ以下でもなかった。
正直、最初の頃は久しぶりの年下の異性の部屋。
何があってもおかしくないカモ、な緊張感はもっていた。
───いた、けれども。
特に、それらしい雰囲気もなく、ただ普通の女友達とヲタ話をする感覚に近いものに思えて、最近は緊張感ゼロだ。
ま、歳と外見考えたら当然か。
向こうはイケメンで、しかも私より八歳も年下ときている。
恋愛も性欲も対象外だろう。
そのことに絶対の安心感と微妙な寂しさを抱えるのは、私がまだ女を捨てきれてなかったということなのかもしれない。
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