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「頭良かったわけじゃないし、オレもすぐ働きたくて。言われたことやってお金になればそれでいいって思ってたけど、やり出すとどんどん面白くなってさ」
少し軽い感じの人だと思っていた奥村さんが、急に真面目になって仕事について熱く語る。大人ってこういうことなのかな。
「先輩の仕事に対するプロ意識を目の当たりにして、オレも負けてらんねぇって思ってさ。資格もいろいろ取ったし、先輩に褒められると嬉しいし、取引先にも『仕事が丁寧で早い』って喜ばれると、やりがいも出てきて……」
ハッとして、「オレばっかり話してごめん」と口を押さえた。
「でも、奥村さんは技術者ですよね。私はなんの取り柄もないし、やってることは誰でもできる仕事です。別に私じゃなくても良かったはずです」
パンストは蒸れるし、足にまとわりつく感じが未だに慣れない。仕事もまだ分からないことが多くて時間がかかってしまう。
「最初は分からなくて当然だから、とにかくやって覚えるしかないよ。松本社長は栗林さんが良いと思ったから採用したんでしょ」
「そうですかね……」
「そうだよ」
うららかな春の風が、花びらを乗せて通り過ぎていく。はたはたとスカートの裾が揺れるのを気にして、伸ばした膝の上に手を乗せた。
「良かったらこれ使う?」
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