憂鬱なお花見

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 奥村さんは腰を上げて、重ねていた座布団を一枚持ってきた。さっき風が吹いて、私がスカートを気にしていたから、めくれないように貸してくれたのかな。とりあえず膝の上に乗せておけばいいのかな……。  ありがとうございますと、裾が浮かないよう小さめの座布団を乗せた。    「違う違う。お尻に敷いて。足痛いでしょ」  え、あ、そっち!? ていうか、普通はそうか! めっちゃ恥ずかしい! 「栗林さんおもろいね」  カーッと顔が熱くなる。「そうですよね」と笑ってお尻の下に敷いた。私はとっさの判断に迷って、こういう失敗を時々してしまう。 「天然って言われない?」 「……言われます」  穴があったら入りたい私を、春のように笑う奥村さん。今まで学校でしか人付き合いがなかった私にとって、年上で、しかも職場も違う男性とこんなに話せるということが未知で新鮮だった。身構えてばかりいたけれど、うちの職場にも、案外奥村さんのように話しやすくて親切な人もいるのかもしれない。 「須貝さんも親切だし、上田部長も親身になって相談乗ってくれるし、松本社長もおもしろい人だし。安心して働いたらいいよ」  ガチガチの新入社員が肩の力を抜けるように、励ましてくれてるのかな。それにしても……。
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