憂鬱なお花見

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「隣の会社なのに詳しいですね」 「井上食堂でよく一緒になるんだよね。栗林さんも今度お昼に行ってみたらいいよ。あそこ安くてうまいから」  そんな繋がりもあるんだ。社外の人ともこうやって親しくなれるのは、奥村さんの人柄の良さだろうなぁ。 「おすすめは唐揚げ定食! 絶品だよ! サックサクなのにジューシーでさ、ご飯モリモリ食える!」  話を聞いていたら、私も唐揚げが食べたくなってきた。脳内で揚げたての唐揚げが私を誘惑する。湯気が立ち上り、外側はサクサクとした食感で、口に入れるとカリッと音が響く。柔らかい鶏肉でありながらジューシーかつ、この噛みごたえ! 噛みしめるたびに鼻に抜ける香り高いスパイス! 妄想するだけで口の中が幸せだ! 「あぁ、自分で言って唐揚げの口になってきたぁ。よだれ出そう」 「私もです」 「えー、よだれ垂らすなよー」 「違います。唐揚げの口の方です」 「あ、そっち!?」  両手を叩きながら盛大に笑う奥村さんは、親戚のお兄ちゃんのような雰囲気だ。こうやって話していると、あまり乗り気じゃなかった場所取りが、奥村さんのおかげでなんだか楽しくて、特にやりたいことが見つからなかった日々も、少し前を向ける気がしてきた。 「奥村さん、私、仕事頑張ります!」
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