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「いいかい、勝田君。我々は負け続けているんだ。君の言う戦いに。来るべき戦いに向け、最も備えができていなかった連中は俺達なんだ」
「う……む……」
菅沼の言葉が余程堪えたのか、流暢に言葉を吐き出していた勝田の口から呻き声だけがこぼれた。
ここぞとばかりに菅沼は畳みかけた。
「俺達も、いや俺達こそ花見なんかに参加していないで、しっかりと現実と向き合うべきなんだよ」
「現実……。嫌だ……」
苦々しい表情で勝田が言う。それには菅沼も賛成だった。
だが、嫌だからと言って目を背け続けるわけにはいかない。
あるいは背けた結果がこれなのだ。
「さあ、花見をお開きにして戻ろう。我々のいるべき場所へ。そして今年こそ人生を先に進めるんだ」
そう言って菅沼は公園の隣に立つビルを指さした。
今年こそ大学に合格せねばならない。公園の桜など眺めている場合ではない。自分の桜にいい加減花を咲かせるのだ。そう決心を固め、菅沼は通っている予備校のあるそのビルへ向かって歩き始めた。
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