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“ほう、初めてここに立つ人間はこの景色に退屈以外の価値を見出せるものなのか…”
自分一人では気づけなかった新たな知見にしみじみ感心していると、横では再び親子が会話を交わしていた。
「どうだ~、さくら。ここから見える景色は?」
「すごい!すごいよ、お父さん!!まるでねっ、街がみんなミニチュアのお人形みたいに見える!!」
「そうだろ~!すごいだろ~!!」
カウンターパンチが見事に決まり、無事さくらの機嫌を持ち直す事に成功した父親はまるで自分の立ち回りを誇るようにニタニタ笑みを浮かべながら自慢げにさくらに答えた。
「でも、お父さんはよくこんな場所知ってたね。」
「あぁ、ずいぶんと長い間来れていなかったが、実は、お父さんもさくらくらいの年齢の時におじいちゃんによく連れられて来てたんだよ…。」
“あ~、なるほどね。”
そう語る父親の顔は在りし日の少年の顔に戻って見えた。
「さくら、今日一日も無駄なんかじゃなかっただろ?」
「うんっ!こんな素敵な場所があるなんて知らなかった!!」
「じゃあ次は花が満開に咲いたころ、お花見しに来ようね?」
「うんっ!楽しみっ!!」
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