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厳しい冬の寒さも和らぎ心地よい暖かさの風が春の訪れを僕に教えてくれる。
“もうそろそろ花が咲く時期かな”
ふとそんなことを思いながら、僕は今日も今日とてこの丘から見える街の景色を一人只ぼんやり見下ろしている。
「――お父さん、早く早く~!」
ふと、僕の後ろの方から誰かの喋り声が聞こえた。
“こんな辺鄙な場所に人が来るなんて珍しいな”
普段自分以外誰もここに居ることは無いため、内心少しドキドキしながら僕は自分の背中を確認してみる。
「さくら~、一人で先々行っては危ないじゃないか~」
「だって~、お父さんが歩くの遅すぎるのが悪いんだよ~!!」
そこでは、父を急かしながらこちらに駆けてくる元気な少女の姿と少女の少し後方にここまで来るのにかなり体力を使ったのだろうか、クタクタな様子の父親の姿があった。
「お父さ~ん、ほんとにあれがそうなの~?」
「そ、そうだよ~、あれが目的の場所っぽいね~…。」
どうやら、親子の目的地は僕のいる場所で間違いないらしい。少女はより一層走る速度を上げ、あっという間にこちらへ距離をつめてきた。
“こ、こんにちは~”
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