信号待ちの桜

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「えっ……」 「うん、まあ。そんな顔すんなよ。今のはちょっとテキトー言っただから。役所勤めで結婚話が漏れないワケないわな」 「そんな顔ってどんな顔だよ」  確認しようにも、俺のデスクに鏡はなかった。真顔でフォローされるなんて不安でしかない。ニヤニヤ笑われた方がずっとマシだ。 「それより、今回は期待していいぞ。他部署の女子も結構くるから。都合着くならお前も来いよ。出会いは大切にしないと」  机に突っ伏した俺に、百田は言葉を被せた。  百田の言うことはわからなくもない。出会いは大切だ。だが、それは数だけの問題だろうか。今出会っている人を知ることも、出会いを大切にすることに繋がるんじゃないだろうか。  なんだか考えていることが言い訳っぽい。もしかして、俺は本当に八束さんのことが気になってる? いや、気にはなってる。  ただ、気になってるって言うのは、文字通り気になってるってだけで、恋愛感情に直結しているわけじゃない。  気を取り直してパソコンに向かうと、すぐに目の前の外線電話が鳴った。
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