必然

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佳那が帰り、凛子と二人になる。 「凛子、私水買ってくるからここで待ってられる?」 「うー。ありがとう。」  ブルーシートは佳那が持って帰った為、近くのベンチに凛子を座らせる。  お花見会場の自販機の水はお茶と共に売り切れてしまっていた。皆、考える事は同じらしい。  結局、道路を挟んだコンビニまで足を運ぶことになった。  凛子を待たせているベンチに足早に戻る。ベンチには凛子の他に人影があった。 「あの、この子友人なんです。介抱してくださっていたようで、ありがとうございました。失礼します。」  凛子の手を取る。 「ご友人がいらしたんですね。」  男性が立ち上がり、視線が交差する。優しく懐かしい声。 「智基?」  目の前には、人生において唯一の彼氏だった人が立っていた。 「恵美じゃん。久しぶり。元気にしてた?」  笑うと眉尻が下がる笑顔に胸が疼いた。 「なになに、二人知り合いなの?」  買ってきた水を飲み終えた凛子が二人の顔を交互に見る。 「さっき話してたビールの売り子さん、この人だよ。なんだ、恵美の知り合いだったんだ。友人の凛子って言います。」  まさかこんなところで智基と会うとは。県外の大学に行った智基は、地元に戻らず就職しているのかと思っていた。少女漫画やドラマでお馴染みの“運命”的だなとそわそわしてしまう。別れたのも嫌い合ってとか喧嘩別れではなかった分、元カレとの再会は運命のそれでしかないと思わざるを得なかった。  智基に送ってもらう事になり、三人でタクシーを待つ。 「ちょっとコンビニ行ってくる。」  智基が向かいのコンビニへ走って行った。 「智基君っていうんだ。後で連絡先聞いちゃお。恵美の友達なら、許可もらってID教えてもらおうかな。」  意中の人と接点が出来た事が嬉しいらしく、凛子の酔いは幾分ましになってきたようだ。頭の中はどうやって落とそうか、脳内会議が行わているのだろう。  元カレだった事は何故か言えなかった。  タクシーが到着し、凛子、私、智基の家の順に帰ることになった。  タクシー内では智基に連絡先を直接聞きだした凛子が嬉々として話をしている。 「恵美、智基君またね。」  凛子がタクシーを降りると、タクシーは次の目的地である私の家へと走り出す。  後部座席から、助手席に座った智基をちらりと見る。友人からの頼みで売り子の手伝いをしていたと話していたが、本業は何をしているのだろう。ぼんやりと車窓を眺めながら、高校時代を思い出して一人むず痒さを感じていた。
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