「かりかり」

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「かりかり」

黄昏が僕を包み。 全身がオレンジを帯びる。 これが夕日なら幻想的でさぞ美しかっただろうに。 バチャバチャ 水音をたてながら、オレンジジュースが僕の額、頬と流れ落ち…地面を濃くオレンジ色に染めていく。 僕をよく虐めるアイツはもう名前も顔も出てこない。 僕の脳が否定しているんだ、この目の前にいる”怪物”という存在を。 グサッグサッ 何度も妄想の中でアイツを殺した。 だけれども、現実で実現できるはずがない。僕にはその勇気を持ち合わせていないからだ。 辛い。 僕は全身をオレンジに染めて帰路につく。 服も髪もびちゃびちゃだ、川にでも飛び込んで誤魔化さないと。 かり…かり… 異音が鳴る。 小さな音だが、何故か僕はその音を聞き逃さなかった。 かりかりという爪をたてて軽く引っ掻くようなこの音は、僕が今から飛び込もうとしていた川から鳴っているようだった。 川は横5m深さ50cm程の小川だ、その川に石橋がかかっている。 いつも、この石橋から川に飛び込む。 かり…かり… その音の非日常感に恐怖を覚えることは無く、好奇心が湧き上がっていた。 石橋に向かい、何処からこの音がしているのか確かめる。 かり…かり… 確実に近い、すぐ側だ。 僕は辺りを注意深く観察する。 だが、異音の発生源らしきモノは見当たらない。 かり…かり… それも当然だった、石橋の真下。 不自然に石橋の中央から垂れ下がっている縄。 その縄に首を括られる形で石橋から垂れ下がっているモノ………アイツだった。 見たことのない宙を舞う謎の物体達。 歯肉の代わりに瞼、睫毛がある僕の頭2個分程の大きな口達。 ソレが青白いアイツの腕や足をしゃぶっていた。 見られた。
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