「怖いねぇ」

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

「怖いねぇ」

ざっざっざっ 森を駆け抜ける二人。 子供用の靴が木を踏み折る音や葉を踏み潰す音を鳴らす。 その音についてくるように大人用の靴が地を鳴らす。 「はっはっはっ、まだついてきてる!!!」 「やだやだ!なんでずっとついてくんだよ!!!」 二人の子供を追いかけているのは、ニタニタと笑うとても背の高い見知らぬ大人。 大人のほうが二人より早く、もう目と鼻の先だ。 「うわっ!」 一人がこけた。 もう一人はそれに見向きもせずに走り続ける。 「や、やめろ…来るなぁ…!」 腰が抜けているようだ。 大人は自身の顔を、その地に伏している子の顔に近づける。 その顔は一切毛が生えておらず、歯が生えていない。 特に印象的なのは、両瞼が糸で縫合されて塞がれている点だ。 大人はその子の肩に手を乗せ、しゃがれた声で一言。 「怖いねぇ」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!