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「怖いねぇ」
ざっざっざっ
森を駆け抜ける二人。
子供用の靴が木を踏み折る音や葉を踏み潰す音を鳴らす。
その音についてくるように大人用の靴が地を鳴らす。
「はっはっはっ、まだついてきてる!!!」
「やだやだ!なんでずっとついてくんだよ!!!」
二人の子供を追いかけているのは、ニタニタと笑うとても背の高い見知らぬ大人。
大人のほうが二人より早く、もう目と鼻の先だ。
「うわっ!」
一人がこけた。
もう一人はそれに見向きもせずに走り続ける。
「や、やめろ…来るなぁ…!」
腰が抜けているようだ。
大人は自身の顔を、その地に伏している子の顔に近づける。
その顔は一切毛が生えておらず、歯が生えていない。
特に印象的なのは、両瞼が糸で縫合されて塞がれている点だ。
大人はその子の肩に手を乗せ、しゃがれた声で一言。
「怖いねぇ」
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