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4. きっと会いにいく
「描けた。背景の割合を多めにしたから、帰ったらサイズを整えて……」
「咲茉すごいじゃない! 完璧よ!」
黒ペンで描いたナノが完成した。黒背景のなかで浮かび上がる姿は柔らかい微笑みをたたえている。
まつ毛は黒を多めに、瞳には光が宿るよう線を細かくして、目力の強さを表現したつもりだ。
頭のつぼみが花咲いたらこうなるのかな、と菜の花畑の花びらを参考にして描き進めたら、王冠をいただいてるみたいに描けたのがお気に入りだ。
「……うん、私も、よく描けてると思う」
最初の線を引いてから、ナノの理想と私が抱いた印象を描くことだけに集中していた。
言い訳も弱気も忘れて、ただ一心に描けた。
「ナノ、ありがとう」
「なんで咲茉がお礼を言うのよ」
「私の人生を変える一枚になったから」
ナノを描くことで、浪人生としてもう一年頑張るという私の覚悟も決まったから。
「……あたしもよ。優勝したいって気持ちが、優勝できるになったもの」
そうしてナノは満面の笑みを見せた。初対面からずっと印象的だった大きな瞳が隠れても、彼女は美少女だった。
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