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2. ナノの依頼
「あたしはナノ。あんたは?」
「私は……咲茉」
菜の花の妖精、ナノ。
彼女の住む花の国には頭に花をいただく妖精たちが住んでいて、年に一度『花見』と言われるコンテストが催されるらしい。
そこで頭に咲いた花の美しさや匂いの芳しさを競うというのだ。
「優勝すると何かもらえるの?」
「日当たりのいい場所に住めるのよ。しかも十年!」
ナノは両手を大きく広げて私に掲げながら、花の精にとって日当たりがどれほど大事か力説した。
なんとなく、私たちのお金に対する感覚と似ているみたいだ。日当たりの良さは彼女たちにとっての財産で、子孫繁栄にも直結するらしい。
信じられない額の賞金がもらえるコンテストと思えば、モチベが上がるのも納得できる。
「菜の花族はね、昔はたくさん仲間がいたの。でも花見で勝てなくなって数が減って……つい最近、カラスに菜の花が群生する世界の話を聞いて興味がわいたの。いいわね、こんなに陽が当たって風も気持ちよくて。やる気出たわ」
「日当たりってそんなに大事なんだね」
「そーよ! だから勝ちたいの!」
「菜の花族で出場するのはナノだけ?」
「ええ」
「過去の優勝者はどんな花なの?」
「バラや牡丹……桜の年もあったみたい」
なるほど。華やかな美人が簡単に想像できる花ばかりだ。ナノはつぼみだから分からないけど、たしかにこのままだと優勝は難しい気がする。
(残酷だな)
でも、受験も同じようなものだった。
容姿ほどの分かりやすさはなくても、努力だけでは補えない部分があると思いながら苦しんでいた。
だからこそナノがまぶしく見えてきた。目が合うだけで、素直に勝ちたいと言える情熱が伝わってくる。
(とはいえ協力できるかは別の話だけど!)
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