3. 描かせてほしい

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 ああ、そうか。朝顔とかミニトマトとか小学校で育てた植物って、冬になったら枯れていた。菜の花もそうなんだ。一年で枯れちゃうんだ。 「で、でも、優勝して日当たりのいい場所に住むんじゃないの?」 「住むわよ。期間は短いかもしれないけど。でも十年あったら、どれだけ子孫が増やせると思う? この菜の花畑くらいにはなれると思わない?」  泣き笑いの表情で私を見上げてから、ナノは背中の菜の花畑を振り返った。  さっきよりもまぶしく、それこそナノの瞳みたいに花びら一枚一枚が輝いているように見える。  それが私の目にも涙が浮かんでいたからと気づいたのは、頷いた拍子にポタポタと手に当たる雫があったからだった。 「描く。上手く描けるかは分からないけど、描かせて欲しい」  一年草の話を聞いて了承するなんて、我ながら調子がいいヤツだなと思う。  でも、自分よりもまだ見ぬ子孫のために頑張るナノの一途さに、私は惹かれてしまった。  小さくてパワフルなナノの生き様を残したい。  描きたいと、思ったのだ。
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