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既読がついてからしばらくして、見下している先輩から追撃のメッセージが飛んでくる。
「花見やるからお前も来い」
実は僕はこのみんなに見下されている先輩に気に入られていた。僕が比較的無口な人間だからシンパシーを感じているのだろうか。他の所謂「イケてる一年生」には声をかけることすらほとんどないが(恐らく自分でもなにかしら馬鹿にされていることにきづているんだろう)、僕にはよく先輩風を吹かせるのだ。
同じカテゴリーの人間だと思っているんだろう。同じカテゴリーな上、後輩で年下だから無条件で少し下に見られているような気もする。
ハッキリいって誠に遺憾である。先輩は僕よりも下の人間だ、一緒にしないでほしい。僕はちゃんと毎日風呂にも入っているし、床屋じゃなく美容院で髪を切ってもらっている。あとトイレでケツを拭いたらちゃんと紙を流してから出てくるし。とにかく先輩とは違う人間のはずだ。
「嫌です」
僕は断りの返信をした。するとすぐに
「なんでだよ」
と返信が来たが、面倒だったのでそこで返信するのをやめた。このままだともう2,3ラリーすることになる。「面倒だからです」と返信するのすら面倒だった。
しばらく既読無視。何通か「おい」だの、「先輩だぞ?」だとか、「お前、年下だよな?」など追撃メッセージが来ていたが無視である。
四通目で
「ジュースおごってやるから来いよ」
とのメッセージが送られてきた。
大学生にもなって物で、それも缶ジュースごときで人を釣ろうとする浅ましさよ。ここでも先輩の人間性がうかがえる。
確かに友達どうして「ジュースおごるから頼むよ!」などというやりとりは往々にしてあるものだとは思うけれど、それは信頼関係が築き上げられた二人が無償の愛で頼みを聞くための儀式のような意味合いのやりとりのはずである。そこに物は介在していても、その物自体には意味はない。
しかしこの先輩は本気で飲み物ごときで人を動かせると思っているのだ、おそらく。あさましい…。
しかしながら僕はそのメッセージにいじらしさというか、哀れみのようなものを感じてしまい、結局先輩の花見の誘いを受け入れることにしてしまった。なんだかかわいそうになってしまったのだ。先輩に「わかりましたよ」とだけ返信し、でかける準備をはじめる。
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