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「なんで電話でねえんだよ」
春休みの土曜日、遅い朝食を食べていると一時間ほど前に幹正先輩からラインが来ていることに気づいた。
幹正先輩からラインが届くのははじめてのことだった。なんせ僕は先輩とライン上で友達になっていないし。こう書くと現実では友達だ、という表現になってしまいそうなので一応言っておくと僕は別に現実でも幹正先輩と友達になったという覚えはない。
幹正先輩は「なぜ電話にでないのか」と僕に問うてきているが、設定上友達以外の人間は電話ができないことになっているのででれないのは当たり前のことだった。でるでない、ではなくそもそもかかってきていないのである。
僕は正直にその旨をメッセージで先輩に伝えた。この人になにも気を使う意味はなかろう。
「なんで友達じゃないんだよ」
先輩はまた問うてきた。画面の向こうでいつものように細い目をギラギラさせながら、口を尖らせて文句を言っている姿が目に浮かぶ。先輩はなぜかいつも不機嫌そうな顔をしていた。
先輩の二つ目の問いに対しても僕は正直に答えることにした。
「たぶん、僕と先輩が友達じゃないからだと思います」
そこから既読だけついてしばらく返信がなかった。
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