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友人への思い
松尾和希は重たい空気を感じていた。先程、親友の神崎拓斗が担任の宮崎に連れられ教室を出て行ったからだ。
──あいつの顔、担任が来るのが分かっていたような顔をしていた。いや、今日の朝からずっと様子がおかしかった……何があった?──
和希はその後の授業をぼんやり聞いていた。
授業が終わるとクラス中ですっかり話題の中心は拓斗のことだった。クラスメートは何があったんだと話ている。それは心配もあったと思うが、多分好奇心の方が強かったふうに思えて仕方なかった。この鷹見台西高校に入学して約六ヶ月。まともに拓斗と話していない奴もいるだろう。好奇心が勝って当たり前だ。しかし、お昼を過ぎる頃には誰も話題に上げていなかった
。ただ和希だけは心に最悪の事態を描いていた。
「あいつ身内に不幸があったんじゃないか」
予想はいとも簡単に当たる。放課後、帰りのホームルームで宮崎は重い口を開いた。
「実は今日、神崎のお父さんが危篤状態になられ、病院に向かいました。もしかしたら明日から暫くは学校に来ることがないかもしれないが、もしもの時はしっかりフォローしてくれ。松尾、お前神崎と仲が良かったな。よろしく頼む」
クラスは騒わついたがホームルームが終わると、みんな自分が所属する部活にそそくさと向かうか、また帰宅部は仲間同士でどこかに寄ろうなど話しながら帰って行った。和希は一人教室に残りぼんやり考えていた。しかし何も思いつかなかった。
──俺は拓斗に何ができるだろう?──
纏まらないうちに和希は時計を見た。
「いけない、先輩に怒られる」
和希は立ち上がり、所属している弓道部の部室に駆け出した。
──あいつ、今どんな気分なんだろう?──
和希は走りながら考えた。しかし浮かばない。間も無く部室。もう同じ一年は準備をしている。
「すみません! 遅くなりました」
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