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〈魔女技師ラーヴィの工房〉第三階層――
「あれ……?」
カーリィが目を覚ますと、自分を[何か]が覆っている感覚に気付いた。
特に、横に細い[覗き窓]からの視界は悪かった。
「……ぷはっ!」
それは、簡単に脱ぐことができた。
「……やっぱり兜……それも、ラーヴィの……」
『やっと起きたか……』
「ひっ……!?」
不意に聞こえた声に驚き、兜を捨てる。
『捨てるな!!』
「……ラーヴィ……さん?」
『……やっぱり、何も覚えていないのか』
「……これって……?」
ここに来てカーリィは、自分が魔導甲冑を着装していることに気付いた。
「なんで、こんな状況に……」
周りを見渡すと、すべての装甲兵士がカーリィを取り囲み、臣下の礼を取るように跪いていた……
『お前を乗っ取ったわけじゃない……だが、訳あってお前とあたしの精神を一部繋いでいる……』
呆然と地面の兜を見つめるカーリィを他所に、淡々と話しを進めるラーヴィ。
『あたしとお前は一心同体……とはいえ、[主]はお前になるから、このドゥルガも、周りの装甲兵士も思いのままに動かせる。
あたしはお前の制御装置みたいなものと思ってくれればいいさ……』
そう言いながら、心の中で毒吐いた……
――まったく、[お世話係]なんて役を押し付けやがって……
ラーヴィは[女神]に『してやられた』と思っていた。
――あの女神は最初から[こうなる]ことを期待していたのか……
しかも……
――ドゥルガにまで何か[細工]をしやがった……
ラーヴィの言葉通り、魔導甲冑の一部に変化があった。
肩部と胸部の装甲に金のラインが、兜の面頬に[第三の目]のような装飾が追加されていたのだ。
無論、今のカーリィは知る由もないが……
実際、女神としてのカーリィは再び自分の記憶を封じた。
少なくとも、今この場にいる少女は、先の戦い、その途中までの記憶しかない筈だ。
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