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居酒屋〈妖精の止まり木亭〉、夕方――
事情徴収を終えたカーリィは、ラーヴィ共々(どのみち、離れられないが)、リアナに誘われて店に来ていた。
今回は不手際の詫びも兼ねて飲食代は冒険者ギルドで負担するという。
『……なるほどねぇ……
あの莫迦弟子はあたしが死んだ後に工房を乗っ取って、技術と研究成果を根こそぎ奪おうとしていたのか……
思い返してみれば、まともに修行しないくせに、秘伝書をやたらと見たがっていた奴だったなぁ……』
兜だけになり、カウンターに置かれた無限函の上にちょこんと乗せられたラーヴィ。
その傍らには件の手記があり、何かの魔術だろうか、ページはひとりでにめくられていた。
『ま、実行前に死んじまったら意味はないがな……』
読むのに夢中になっていた為か、自身の上で寝そべりたまにカンカンと叩いている小妖精にも気付かず、彼らが制御室の掌握に手古摺らなかった理由――乗っ取るための手順が手記にすべて書かれていたことに納得する。
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