42人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
街道より程よく離れた山間に潜む地下墳墓――
その入り口を見渡せる岩陰で――
「風が暖かくなってきたな……」
柔らかな春風がカインの肌を撫でる。
戦士職としての姿と誇りを示す、青い革製半甲冑と腰に下げた長剣の着け具合を確かめながら、中腰で円陣を組んでいる仲間を見渡す。
「それじゃ、作戦を確認するぞ」
羽飾り付きの兜から見えるのは、少年の面影を残す青年の顔……
その表情は、これから起こる戦いに緊張しているようだ。
「えっと、入り口の見張りを素早く無力化、その後に遺跡内部に潜入して各個撃破……数が多い時は私の[眠りの呪文]で対応……でいいのよね?」
カロリーナが自信ありげに笑みを浮かべる。
動きやすい今どきの軽装な恰好ではあるが、魔術師の必需品である飾りのついた長い杖は手放さない。
エルフの血が濃いのか、少女のように見えて、それでいてどこか妖艶な雰囲気も見える。
そんな彼女の言葉に、怪訝な表情を見せたのは……
「だけどよぉ……その見張りが入り口にいねぇっていうのが気になるんだよなぁ……潜んでいる気配もねぇ」
痩せぎすの男、ジャックウィルだ。
同じ軽装でありながら、地味な服装を選んでいるのは、目立たぬように周囲へと溶け込むためだろうか……
「気になるのは、同じ盗人としてのカンですか?」
「俺は誇りある冒険盗賊だ! あんな外道連中と一緒にするなぃ!!」
からかわれて言い返す程度には、盗賊としての誇りはあるようだ。
そのからかいの言葉を投げた少年ミシェールも、遺跡の入り口に目を向けつつ、身につけた司祭装束に見合う警告をする。
「でも、確かに変です……
それに、あの遺跡からは何やら尋常ならぬ[邪な気配]を感じます……」
しかし、
「具体的には何がいるのかわかるのか?」
「ぼ、僕はまだ見習い助祭だからそこまでは……」
カインに問われると言葉を濁す程度のようだ。
最初のコメントを投稿しよう!