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都筑×美帆
「…絶対に秘密だぞ」
少し赤くなった顔で手元のグラスを煽る都築洋平を、私は冷めた目で見つめる。
「なんで…?」
「俺があいつに惚れてるなんて、図に乗らせるだけだ」
整った顔のこの男。
酒に酔っただけではない狂気が見え隠れしている。
「…狂ってる」
「なんか言ったか?」
「…なんでもない」
好きなら素直に表現すればいいのに。それができなくて恋人に暴力を振るうなんて。
彼女のこと、すごく傷つけてるって気づかないの?
でも。
私がそう言ってしまえば、都筑は私を遠ざける。
…わかっているから、言わない。
代わりにグラスに残った酒を飲み干すと、都筑が急に立ち上がったので、私は複雑な思いでそれを見つめた…。
「…近いうち、ちゃんと決着をつける。あいつは唯一無二の…俺の女だから」
聞いてもいないのにそう言う都筑に、私は気づかれないように鼻で笑った。
「…彩花って、どんなに俺に叩かれても…絶対くっついて寝たがるんだよな…ったく、どれだけ俺のことが好きなんだか…」
赤い舌で自分の唇を舐める都筑は妖艶…。
はぁ…と漏らす吐息の熱さに、思わず都筑の下半身に目をやると…ハッキリとした形を成していた。
思わず手を伸ばす私に気づいた都筑が、ふと体の向きを変えたので…行き場を失った私の手は、そのまま下へ落下する。
「…のろける暇があったら、早いとこ帰ってやんなよ」
片手を上げて出ていくアイツを苦々しい思いで見送りながら、恐怖に震える都筑の恋人、彩花を思った。
酔って帰宅したアイツは、なんだかんだと難癖をつけて勝手に彼女にイラ立ち、頬を何度かはたくだろう。
そして吹っ飛ぶ彩花に股がり…関係を迫る…。
それが都筑の愛し方。
恋人を叩いて欲情する都筑…怖いのに、どうしようもなく惹かれてしまう自分のことが…実は一番怖かったんだ。
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