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都筑×彩花
「なんだよ…部屋が真っ暗じゃねえか?!」
帰る時間は伝えておいたのに、どうして電気もつけないのか…。
「おいっ彩花!」
帰るときは絶対出迎えろって言ってあるのに…あいつ…!
腹を立てながら暗闇を進むと、キッチンの床に座り込む彩花に気がついた。
「…おかえりなさい」
壁にある電気のスイッチを入れると、パチパチっとまたたいて灯る蛍光灯の下で、妙に青白い顔をした彩花が見えた。
その顔を見た瞬間、こいつの前ではつい甘えが出て…なかなか優しい言い方ができない自分を反省した。
今日こそは…と思うのに、またきつい言い方をしてしまった。
寒い季節に素足でキッチンに座り込む彩花。
冷え性で、いつも寒いと言っているのに…何だか様子が変だ。
「お前…足、寒くないのかよ?」
触れてみると、氷のように冷たい。
…彩花は返事をしない。
いつもならこの時点で怒りのスイッチが入るところだが…。
「まぁ…いいや。それより彩花、ちょっと話があるんだ」
鞄をベッド脇に置こうと寝室に入ると、目の端で、彩花も動いた気配をとらえた。
いつの間にか、俺の真後ろにいる…。
寒かった…と言って、抱きつく気だろう。
俺は…さっきポケットに入れたシルバー色の小箱を取り出した。
…安くはなかった。
でも、これが彩花の指にはまるかと思うと…嬉しくなってすぐに購入を決めたんだ。
振り向いて、抱きつく彩花を受けとめながら、小箱の蓋をあけて…
「彩花、俺とけっ…こん」
突然、腹に鈍い痛みを感じ、反射手に手をやると
…ヌルッ…と赤いものが手についた。
畳の上に、ボタボタ…と、赤い液体が落ちる。
それが自分の血液だと理解した瞬間……
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