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1時間くらい 車に揺られていると 目的地の水族館へと到着した。 「主任、運転お疲れ様でした」 車から降りて 労いの言葉をかければ 主任はあからさまに嫌そうな顔をしていて 「あのさ、お試し期間でも一応俺、彼氏なんだから名前くらい呼べよ」 「な、名前?えっと、久城さん?」 「……」 「総士さん?」 「正解」 まるで 太陽のように 眩しい笑顔を私へと向けながら その笑顔に見惚れて立ち尽くす 私の手を取り自分の指と絡め水族館の中へと入っていく。 たかが名前。 けれど 私が名前を呼んだ瞬間の 彼のあの笑顔が脳裏に焼きついて離れない。 「何から見る?」 案内板を 指差しながら 何から見たいか 最初に私に聞いてくれた総士さん。 そんな何気ない気遣いですら 私にとっては久々でなんだか、くすぐったい。 .
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