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「い、いただきます」 緊張して心拍数が 早まり胸がドキドキして顔が強張る。 ただ クレープを食べるだけで こんなにも緊張する自分が心底嫌になる…… そんなことを 心の中で考えながら パクッとクレープにかじりつけば 口いっぱいに甘さが広がると同時に頬が緩んだ。 「どう?」 「美味しいです、すごく!!」 ひとくち食べたら 止まらなくなって次から次に食べていた。 美味しい…… 外で人目を気にせず食べるクレープが こんなにも美味しかったなんて知らなかった。 「ついてる」 そう言いながら 伸びてきた総士さんの手は 私の口元に ついた生クリームを 小さく笑いながら 親指で拭いそのままペロッと舐めた。 「……あまっ」 「えっ、い、いま、な、なめ」 突然のことに驚き まるで酸素を求める金魚のように 口をパクパクさせる私をよそに 総士さんは顔色ひとつ変えずコーヒーを飲んでいる。 .
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