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第十章 健人、社内公認の富豪になる!
「長谷川さん……めっちゃ、決まってるッス!」
由宇が選んでくれた服を着て、ドキドキしながら出社した、健人。
その変化に、真っ先に気付いたのは、部下の羽田(はねだ)だった。
彼は、健人の下で働いている、若手のデザイナーだ。
少しお調子者だが、憎めない男。
やはり企画デザインを担当しているせいか、ファッションにも詳しかった。
『長谷川さんはイケメンで、体型もバッチリなんスから。もっとオシャレしなきゃ!』
休憩時間には幾度となく、そんなお説教をされてきた。
何度か一緒にブティックへ出かけて、服を選んでもらったこともある。
その羽田に、褒められたのだ。
健人の胸に、自信が湧いてきた。
「そう? 似合ってるかな?」
「完璧、ッス! しかも、このブランド! 最高ッスよ!」
羽田が大きな声で騒ぐものだから、健人の周囲に人が集まって来た。
「何だ、どうした?」
「長谷川係長が、イメチェンしたらしいですよ」
「へぇ。そう言われると、カッコいいわねぇ」
あまりピンと来ていない営業課のスタッフたちに、羽田は思わず叫んでいた。
「反応、トロいッス! このシャツ一枚だけでも、7万円は下らないんスよ!?」
その法外な高値に驚く面々に、彼はさらに力説を始めた。
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