Side リョウヘイ

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Side リョウヘイ

 嵐のように部室から引きずり出され芽以を、なすすべもなく呆然と見送るしかなかった。いや、より厳密に考えればそれより前にすでに呆然としていて、混乱は極まっていた。手の中の味噌煮込み味のバカウケもどうしたらいいんだ。お土産?  一体何事なんだよ本当に。今日はなんて一日だ。  そんなところに現れたのが、同じバスケ部所属の(ガイ)だ。そして凱の視線もなんだか不穏だった。俺を哀れなものを見るような目つき。タイミング的に芽以には会ってないはずだ。とすると。 「畜生! これも嘘なのかよ!」  思わず磨いていたボールを床に投げつければ、それは跳ね返って俺の後頭部を打撃した。俺は朝、バスケ部のグループLIMEで朝から練習するって聞いたから早く来てたのに。 「亮平、お前はもう少し考えるって作業をしたほうがいいぞ。春休みの練習予定表なんて配られてるじゃん。いきなり翌日練習が入ったりしないじゃん」 「いや……改めてそう言われればそうかもって思いはするんだけどさ、糞」  俺の語尾は小さくなるばかりだ。  今日は朝からこんなことが続く。姉貴と妹にろくでもないことで騙されて今日がエイプリールフールだと知った。それで急遽体育館があいたから練習するっていうグループLIMEを……。 「俺は悪くないよな? 凱」 「悪いか悪くないかで言えば、悪くないよ。むしろ悪くなさすぎると思うけどよ……お前、生きるの辛そうだな」 「うるさい」  達観したように俺の肩にぽんと手を置く凱が憎い。 「それより何かあったのか?」 「何かって?」 「俺がネタバレする前から機嫌が悪そうだったから」 「うるせぇ。それから勝手にバカウケ開けんな。……騙されたんだよ別口で、多分」 「へぇ、どんな。意外と合うじゃん、味噌とバカウケ」  どんな。芽以にコクられた。それを言ってしまうことは簡単だったけれど、安易に言うのは憚られた。もし、もしあの告白が本当だったら?  そう考えると、こう言うしかなかった。 「秘密だ」  凱は肩をすくめた。
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