I need you

1/5
前へ
/51ページ
次へ

I need you

 パーティが終わって、仲間うちだけで二次会をすると言うみんなとは別れて、ロビーのソファーに腰を下ろして手持ち無沙汰にスマホでパズルゲームをしていた。 「なつ」  と呼ぶ声に振り向くと上田さんがいる。 「おつかれさま」  私はゲームの画面を閉じて立ち上がる。 「お疲れさま。疲れただろ?」 「うん、少しね。上田さんも大変だったね」 「まあね。荷物も多いから、今日は部屋取ったんだ。帰りも遅くなると思ったから」 「そっか。あたしはちょっとラッキー」  と言うと、彼は少し笑う。 「じゃあ、行こうか」  彼はすぐそばに置いていた私のキャリーバッグを手に取る。 「いやいや、いいよー、自分で運ぶから」 「まあまあ」  と返してくれない。  私はあきらめて彼の後ろについて行った。  二十五階の部屋はこのホテルの中では高い階ではないけど、十分に眺めがよくて、大きな窓からはまだ明かりのついたビル群が見える。  私は部屋に入ってすぐにハイヒールを脱いで裸足になって、脱いだ靴をクローゼットにぽいぽいと投げ込む。 「はー、やっと靴脱げた!」  彼はその靴を見て少し笑って、ジャケットとベストを脱いでハンガーにかけながら、 「ちょっと足元ごちゃごちゃしててごめん。気をつけて」  と私に向かって言った。  部屋の中はアルミ製の大きなカメラケースがいくつも置いてあって、 「これ、明日持って出るんだよねぇ?」  と確認してしまう。 「そう、借り物は返しに行かなきゃならないし」  ネクタイを襟から引き抜いてワイシャツのボタンを外しながら、ちょっとため息をつく。  まだまだ彼の仕事は終わらないらしい。 「おお……お疲れさま」  私が振り向いて目をパチパチさせると、彼は面白そうに笑って、ハーフアップにしていた髪をほどいた。 「まあ、ちょっと落ち着かないかもしれないけど」 「ううん、大丈夫」  私は裸足のまま、編み込みにしていた髪をほどきながら窓に近づいて、外の景色を眺めた。  近くのビルはオフィスビルのようだけど、まだ明かりのついた窓がちらほらと見える。  もう夜も遅い時間だよ、と思ってしまう。 「なつも疲れてるだろうしと思ってたんだけど……だから、急になってごめん」 「あ、ううん」 「そのドレス見たら」  ふと、すぐ後ろに上田さんが近づいて、肩から二の腕を指で撫でる。 「え?」  首の後ろでリボンを結んでるホルターネックの黒いワンピースは背中が大きく開いていて、ちょっとセクシーかもとは思った。  胸元は裏地がついているけど総レースで、パッと見では肌が透けているようにも見える。  でもスカート部分はふんわりとしたAラインで、セクシーさとかわいらしさがバランスよく合わさったワンピースだと思う。 「……脱がせてみたいなって」  私の後ろ髪を左肩に流して首の後ろのリボンに触れるけど、すぐにはほどかない。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加