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そのまま露わな背中をそっと指先でなぞる。
「えっ……あー、やだ、えっち」
と笑うと、
「嫌じゃないくせに」
耳元でくすくすと笑う声がくすぐったくて、でも私の中のどこかにある官能のスイッチを入れてしまう。
「大胆なの選んだな」
背中を撫でながら、私の耳にほんの少し唇をあてる。
「ん、……」
「……なつ」
掠れた低い声で名前を呼ばれると、それだけでとろけてしまいそう。
私の頬がふわっと上気するのが自分でわかる。
「上田さんって、ずるい」
肌が露出しているところだけを指先でそっと撫でて、それで私の奥深くが熱くなるのを彼はもう知っている。
「うん、自分でもそう思う」
私の背中にぴったりとくっついて、でも強くは抱きしめない。
ただ肩から腕、腕から首筋へと手を滑らせて、触れないけどすごく肌に近いところに唇を寄せて、彼の吐息がうなじのあたりにかすかに感じる。
抱きしめられているわけじゃないのに、私は動くことができない。
「ここじゃ外から見えるな」
と言いながらも、左手は私の肩をゆっくりと撫でていて、右手で私の首のリボンをからめ取りながら時々背中に触れる。
「ん、見えるかな?」
「そこのビルから、誰か見てたらどうする?」
「えー……見えないしょ?」
「見せつけてみたいな……僕の女だって」
どきんと心臓が高鳴る。
そんなふうに言われたのは、はじめてだ。
「上田さん……」
「やたらと、なつがきれいになったって言われて」
耳元でくすっと笑うのが聞こえる。
「上田さんに?」
「そう、僕に」
「なんで?」
「さあ」
言葉を切って、私の頬に手を添えて後ろを向かせて、唇を重ねた。
唇で唇をそっとなぞるように触れて、離れる。
「……こうやってしてること、知ってるんじゃない?」
「や、そういう言い方は、やらしいと思います」
なんて、変な具合に丁寧語になってしまう。
「……『やらしいこと』、したくない?」
ちょっと首を伸ばせばすぐにキスできるくらいの、唇に吐息を感じあえる距離で、そんなことを囁くの、ずるい。
至近距離で私を見つめる瞳はとてもやさしいけど、ひとつの答えしか認めない、そんな強さも感じられる。
「ううー……したくな……くない」
「どっちだよ?」
鼻先が触れる。
呼吸が浅くてくるしい。
「……した、い」
私はそう返事をすると同時にちょっと首を動かして唇を重ねた。
我慢なんてできないし、我慢なんてしなくてもいい。
どちらからともなく舌を絡めあって深いキスを求めあう。
体の向きを変えて抱き合った。
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