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向う春
だから、逃げない。逃げちゃダメなんだ。
「うおおおお!!!」
無我夢中で飛び込んだ。
「君は無鉄砲だから、これ、私の代わりのお守りね。」
あの夜のデートから何日もしたけど、冬のまだ寒い日に君は絆創膏だらけの手で、渡してくれた。お守りだった。
こういうことを忘れて、俺は馬鹿だ。
もう逃げない。突き進むだけだ。
「天野ーー!やめろーー!!」
先輩が叫んでる。無茶だとわかってる。
でも止められない。
俺の無いはずの右腕が伸びる。不思議と感触を感じる。希里を探したはずの【敵】は今、俺の前にいる。このお守りで勘違いしたんだな。見つけてから懐に入れておいてよかった。こっちを見ろ。
俺は腕を折る、突きの構えに移る、そして放つ。
【敵】のそれは引きちぎれた。
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