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逝く春
「森野に関わらないほうがいいよ」
高校二年の春に、同級生から言われたが、天野はクラスで静かに本を読む彼女の横顔から目が離せなかった。
「私に関わらないほうがいいよ。」
それが初めて聞いた彼女の言葉だった。声も可愛いと思った。天野は彼女にまっすぐに見つめてもらいたいと思った。
「なんで、私に関わろうとするの?」
天野が勇気を出して帰り道に声をかけたら、森野はそういって離れていった。そして、その帰り道に二人は出会ったのは三本足の烏だった。それは不気味な声で鳴き叫び、二人を睨んでから、山の向こうへと消えていった。天野はその時、とっさに森野の前に立っていた。さらに言えば竹刀まで抜いて、それに向き合っていた。
「なんで、そんなことできるの?」
「…分からない。でもオレは今のカラスを見ても、カラスだなぁってしか思わなかった。なのに君は怖がってた。だから、護らないとって思った。」
「無鉄砲なんだね。」
「身体が丈夫だからさ。」
「ありがとう。それから、さっきまでごめんね。」
ふたりはまた歩き出した。ふたり一緒に歩き出した。
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